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新月の闇 満月の光
第7章 ルビーとエメラルド

「おゃ、『mahiro』くんかね? 」




監督が此方を見て、怪訝そうに首を捻る。


黒のウイッグと、カラコンを付けたままの俺は、髪をセットしてなくても、彼等の良く知る『『Yume』のマネージャー』だ。


だから、監督は首を捻ったのだ。


『『Yume』のマネージャー』=『mahiro』と言う図式が咄嗟には浮かばない。


それくらいには、『mahiro』の姿は印象深いのだ。




「お久しぶりです。と、言った方が良いですかね? 古寺監督。『mahiro』の立場からすれば…………? 」


「はは、……。驚いたね。良く化けたものだ。良く見る顔なのに、これほど気付かないとは……。如月社長もお人が悪い…… 」


「あはははは……。普段のこいつは『オーラ』皆無ですからね。気付かなくても、無理無いですよ。監督 」




社長が、密やかな声で笑う。


俺は、ジッと結芽を眺めていて、少しの騒がしさなのに、それに気付いた結芽が此方を見やった途端、彼女と視線が絡んだ。


色気を含んだ微笑みを見せるが、吐き出す吐息は、安堵を含ませたモノ。


逸れが解るのは、俺だけだ。


逸れを合坂が勘違い。


漸く感じ始めたかと、ほくそ笑んで行動をエスカレートさせる。


そうすると、益々『Yume』が嫌がってのけぞった。




『Yume』をアップで撮れない理由。


過度のスキンシップへの嫌悪。


逸れが表情に現れているんだ。


『Yume』は女優では無い。


あくまでも歌手なんだ。




「プロの女優なら、大袈裟な振りや、過度のスキンシップなどの独り善がりな演技でも、表情1つ変えずにあしらえる。けれど、『Yume』は歌手だ。女優では無い。嫌だと思う事柄が総て顔に出る。『 今、話題沸騰中のイケメン俳優 』って豪語するのなら、その程度の事くらい考慮しろよ、合坂一!! この、下手くそっ!! 」




そう、イライラから思わず口に出してしまっていた。


あぁ、俺とした事が…………。


けど、まぁ、言葉だけは乱れずに言えたと思う。


周り皆、固まってしまったけれどね。



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