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第53章 最期

どうして？

前は、抱きしめてくれたじゃない？

奥さんが冷たいって？


心がグサリと刺さる

泣き出しそうになり、両手で口をふさぐ


嘘言うなよ？

抱きしめてないだろ？

勝手に泣いて抱きつくから、突き放せないだけだ


何で？

私の方が、いい女よ？

体も、顔も負けてないわ？


だから、旦那に言えよ？


旦那が、誠の奥さんに夢中だからでしょっ。。。

寂しいよ。。。？


誠の腰に手がまわるのが見える。。。

体が震える。。。


なあ？

いい加減にしろよ？

旦那に、慰めてもらえ。。。


いいの？

奥さんに言っても？



え。。。？何？

体が固まる


奥さん、知ったら悲しむわよ？

誠と出会ったのも偶然じゃないし、隣のマンションに住んでたのも偶然じゃないって知ったら？


ずっと、引っ掛かっていた記憶のピースがはまる


直樹と、別れたあの日。。。

歩道橋の上から見てた


あの女は、ゆりさんだ。。。


ゆりさんは、視界の端で誰かと歩いて別れて、直樹に抱きついていた


ゆりさんと歩いていたのはきっと、誠だ。。。




ひとめぼれしたんだよ？



嘘つき。。。っ。。。


声が漏れる


かばんが、落ちて荷物がバラける


誠と目が合った


詩織？？

何で？


う。。。っ。。。


荷物をかき集めて、走り出していた


途中の路地で、手が伸びてきて捕まる


逃げるなよ？


直樹が抱きしめてくる


だって。。。っ。。？


泣くな。。。


誠の声が聞こえる



俺の奥さん、返して？



離れないのは、詩織だよ？



直樹が両手をあげていく


抱きついたまま、私は、離れない


私に、後ろから、声をかける


落ち着くまで、待つから？

待ってる。。。


わあっと、泣き出してしまう


泣くなって？


ゆりさんの声が聞こえる


離れなさいよ？


私を直樹から離して、私を叩いた


悔しくて叩き返す

更にむかついて、かばんでなぐった


私から、２度もとらないでよっ。。。？


ゆりさんが、うずくまった上から文句を言う


下から笑いかけてくる


取られる方が、悪いのよ。。。


イライラして、更にかばんでなぐった


まじで、むかつく。。。