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Vesica Pisces
第9章 太陽は静寂を焦がす
社食のトレーにはカレーライス。

先に座っていた未知と和可菜の元へ向かうと、席に座るよりも先に2人は口を開いた。

「透さん、来たでしょ?」

『何で知ってるの?あっ…』

これでは自分から白状したも同然で、未知は嘉登から送られてきたメールを見せてくれた。

この前の日曜日にみんなでご飯に行った時のものだった。

未知に透の事を相談していたら、知らず知らずに涙が出てきて…目が潤んで鼻も赤くなっている横顔は今見ると恥ずかしさでいっぱいになる。

未知によると、この写真を透に送ったらしい。

嘉登に泣きついたわけではないのに、それでもこれ一枚でオーストラリアからとんぼ返りしてくれたという事実に、少しくらい自惚れてもいいだろうか。

「で?もう付き合ってる?」

『うん…でも、まだなんか信じられないかな』

「昨日ここまで来たんでしょ?見たかったなぁ伽耶が攫われるとこ」

和可菜が未知に手を差し出して小芝居を始めると、ランチは賑やかに過ぎていった。

午後の入力も捗り、定時に仕事を終えるとエレベーター前でスマホを開いた。

“到着、仕事行く”

シドニーの空港を出た所の写真が一枚。

寝ていたのかぼーっとした表情がまた嬉しい。

“私は終わったので帰ります、頑張ってね”

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