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Vesica Pisces
第10章 太陽は静寂を包む
「そんなんじゃねーよ」

「えー?こんなカッコいいのに?」

一気に距離を縮めてくるパワーには感心するけれど、それ以上はない。

「写真ダメならLINE交換しよー?」

「しねーよ」

ウザいと思って余所見した視線の先に息を切らした伽耶。

走り出したのは透の方で。

「お前、会社出るときにメールくらいしろよ、待ちぼうけしたくねーよ」

『ナンパされてたのに?』

「お前が連絡しねーからだろ?」

『私のせい?』

「あったりめーだろ、何分待ったとおもってんだよ、14分だぞ」

『いきなりなんだもん、14分くらいしょうがないでしょ』

「お前、それマジで言ってんの?」

それがどれに当たるのかわからない伽耶は眉間に皺を寄せる。

「14分あったら何でもできんだぞ」

『カップラーメンくらい食べれますね』

嫌味たっぷりにそう返し歩き出すと、ぐっと腕を掴まれた。

透の胸の中に背中から戻される。

むっとして顔を上げると、屈むように透は顔を近づけてキスを落とした。

公衆の面前で一瞬のキスに言葉を失う伽耶。

「14分間キスしてみる?」

『しない…』

「これからは先にメールしろよ」

伽耶は素直に頷いた。
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