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Vesica Pisces
第10章 太陽は静寂を包む
ホテルのロビーで伽耶を待っていたのに、先に挨拶を済ませておこうと創一に掴まった。

ウェアやボードの会社はもちろん、サプリメントや眼鏡、はたまた医療器具の会社まで幅広く招かれている。

挨拶から紹介まで創一に丸投げして、やる事といえばなるべく和かに頭を下げるだけだ。

正直お偉いさんは皆同じ顔に見えた。

「透」

「あ?何で居んの?」

振り返った先に居たのは吉信と然だった。

「来るなら来るって言えよ」

「お前の世話にゃならねえよ」

スーツで粧し込んだ吉信だが、やはりスーツに着られている感が否めない。

然は涼しい顔で隣に立って居た。

「久しぶり、ちょっとは成長したか?」

「よくこんなせっまいごちゃごちゃしたとこで暮らしてんね」

相変わらずの素っ気ない然。

ブブッとポケットでスマホが震えて、吉信と然にロビーにいるように声を掛けて伽耶を迎えに行く。

シンプルなサーモンピンクのドレスを着た伽耶を捕まえた。

『ご飯食べるだけなんて嘘でしょ?』

「お前は食べるだけでいーの」

手を引いてさっさとエレベーターに乗った。

「…可愛い」

『え?なんて言ったの?』

確信犯で覗き込む伽耶。
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