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Vesica Pisces
第10章 太陽は静寂を包む
『もう、音がわからないから』

そう言った伽耶は無理やり笑顔を作っているのが分かった。

「美味い飯でも食うか、腹減った」

不穏になりかけた空気を払ったのはやはり吉信だった。

パーティー会場に戻って創一にも伽耶を紹介した。

料理を食べながら、然と最近のスノーボードについて語り合う。

「透、元気?」
「透、久しぶり」
「いつ帰ってきたの?」

パーティーに添える華は一段と煌びやかで、立食しているこの場には似つかわしくない香水が漂う。

「お前らTPOっちゅーもんを考えろ」

「えー?考えてるよ?」

いつも通りの香水がきつくなっていることに気づかない彼女らを適当にあしらう。

「こんなやつの彼女でいーの?」

然が伽耶に問いかける。

「うっせ、余計な事言うな」

「余計な事って自覚あるんだ?」

伽耶はやりとりをただ笑って見つめている。

伽耶以外のオンナなんて眼中にない。

そりゃパフォーマンスやレースの後に相変わらずヤりたくはなるけど。

それはそういうのとは違う、明らかに。

ほんのり耳朶が赤くなっていて酔っている伽耶を見つめる。

今日はちゃんと本来のベッドの使い方をするからな。
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