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Vesica Pisces
第11章 太陽は静寂に沈む
「最後まで責任取れよ」

そう言った透の真意が汲み取れず呆けていると、透は続けた。

「だーかーらー、騙されてやるって言ってんの!俺こんなんじゃねーのに、お前のせいだからな」

張り詰めてたものがふっと緩んで、思わず表情に出る。

「早く言えよ、そーゆー嬉しい事は」

ぶにゅっと頬を潰されても、笑顔だけが零れる。

『嫌われたくなかったから』

「俺の気持ち、見くびってんじゃねーよ」

潰れた唇に一瞬のキス。

「他には?俺が怒りそうな事で黙ってる事、ねーの?」

『…初めて、です』

「ナニが?」

確信犯で問い質す透の笑顔は最高に意地悪でカッコいい。

『…わかってるでしょ?』

「名前、呼んでみて」

意を決してさっきを思い出す。

「…と、と…ぉ…う…?」

「る」

透が目の前で【る】
の音を形にする。

「…る?」

うんうんと頷く透は、早く名前を呼べと目で訴えてくる。

「…っ…とぉる…ンッ‼︎」

突然塞がれた唇にと、鼻腔をくすぐる同じボディーソープの香り。

透の首に掛かっていたタオルを掴むと、それははらりと床に落ちてしまう。

のし掛かる透の胸を押し返そうと触れた肌は滾るように熱かった。
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