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Vesica Pisces
第11章 太陽は静寂に沈む
「…っぷは…」

ずっと潜っていた水面から顔を上げたばかりの様に酸素を吸い込む。

後退りした態勢の膝の間には透の脚。

「キスも初めて?」

『違うけど…』

「違うのかよ」

チッと舌打ちをして見せて、ジリジリと間合いを詰められる。

躙り寄る透は獰猛な獣の様で、熱い眼差しを逸らすことは出来なくて。

「と…る…」

ぎゅっと目を閉じると透は立ち上がり、体が宙に浮いた。

「お前、それずりーわ」

俗に言うお姫様抱っこに、透の首に手を回した。

ベッドへ向かう透の肩に唇を寄せてみる。

合わさった胸の、二つの鼓動が追いかけ回す様に早鐘を鳴らしていた。

閉じたドアのガラスに映ったそれに一瞬身を硬くした。

柔らかなシーツの上に降ろされると、透は唇を摘んでいた。

「とお、る?」

「俺の親は事故で一緒に死んだんだ、幸せだと思わねー?」

突然零した透の話し。

「まだガキだったからさ、よく覚えてないんだけど、それでも…一緒に死ねるって良いよな」

ぐっと肩を掴むと、少しだけ削られるタトゥー。

「嫌?これ」

首を振るだけじゃ否定しきれないと思った。

そっとその手を退けて、燃え尽きた太陽にキスをした。

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