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Vesica Pisces
第14章 太陽は静寂を切り裂く
寝息を立て始めた伽耶を見つめる。

元カレか。

THEサラリーマンって感じの普通に感じの良さそうな奴だった。

何で別れたんだよ、全然わかんねー。

「人の気も知らねーで、気持ち良さそうに寝てんじゃねーよ」

指先でそっと頬を撫でる。

「いつかなんて…いつ来るんだよ」

頭の中を空っぽにして、ぼんやりと天井を見つめていたのに、伽耶の寝息に感化されたのかいつの間にか眠りに落ちていた。

目が覚めれば、そこに伽耶の姿は既に見えなくて、ダイニングへのドアを開けると3人はテーブルに着いていた。

『コーヒー飲むよね?』

目が合った伽耶がコーヒーを淹れにキッチンへ向かう。

「…へぇ、進むの早くね?」

嘉登はすっと体を斜めにしたけれど、未知が盛大にむせた事でどうやら間違ってなさそうだ。

「傷心の時に漬け込むとかどーなの」

「漬け込んでねーよ、タイミングを見計らってたんだよ」

はんっと鼻で笑って伽耶からコーヒーを受け取った。

目配せすると伽耶は破顔して、真っ赤になっている未知を抱きしめた。

昨日と今日は違う日だ。

何が起こるか誰にもわからない。

朝食をとると、嘉登と未知を見送る。

並んで歩いていた2人は曲がり角で手を繋いだのが見えた。
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