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Vesica Pisces
第1章 太陽×静寂=99…
ライトに照らされて時々浮かび上がる嘉登の横顔にドキドキする。

抱かれた肩がまだ熱くて、目の前のグラスを手に取った。

冷たく薄くなったアルコールが、喉と頭を冷やしてくれる。

フロアでは次々にエアを決めるライダー達。

嘉登の友人の征治もダイナミックなエアを決めていく。

「…なんか…らしくねぇな」

パフォーマンスが終わってパークの隅に戻った征治の顔は浮かない。

俯いて、嘉登らの声援にも応えず汗を拭う。

側にいた数人と何やら険しい顔で言葉を交わしているが、暗がりと角度で何を言い合っているのかまでは判らなかった。

空になったグラスを置くためにテーブルに向き直ると、ちょうど伽耶たちの席に階段を上がってくる人影。

ブラウンの髪に翠色の瞳。

幼さの残るその瞳と目が合うとくしゃっと満面の笑みが溢れた。

一番近くに座っていた稜と顔を近づけて、親しげに会話を始めたところを見ると、どうやら知り合いらしい。

辺りを見渡して誰かを探している様だった。

(とおる…?)

彼らが口にする探しているだろう、初めて知るその人の名前。


恋が始まるいつかのその日が、今夜だなんて––––…

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