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Vesica Pisces
第1章 太陽×静寂=99…
併設されたパウダールームには女の子がひしめき合って、メイク直しに余念がない。

鏡ごしに反転した唇から溢れるのは、嘉登らへの賞賛と羨望、そしてあわよくばお近づきになりたいという欲望ばかり。

伽耶は首をすくめて外へでると既に照明が落とされ、より好位置でパフォーマンスを見ようとフロアに人が押し寄せていた。

時にぶつかりながらも人波をかき分けて進む。

「ねぇねぇ、俺らとあっちのVIP席で一緒に見ない?」

「よく見えるし、俺らの奢りでどう?」

暗い上に照明が所々しか当たらないため口読が難しいけれど、何となくの雰囲気とあからさまに酔っている息遣いに、首を振ってみせる。

「一人が嫌なら友達も連れておいでよ、ね?」

行く手を阻まれた上に捕まれた腕は、思ったより力が強く振り解けそうにない。

近づいてくる顔に顔を背けたその時だった。

「その子、俺のだけど?」

ぐいっと身体を引き寄せたのは嘉登だった。

歴然とした外見の差に怯んだ隙に、嘉登は肩を抱いたまま人波を抜ける。

「絡まれてるのが見えた途端、飛び出してったんだよ」

席に着くなり未知にそう教えられて、顔が赤くなるのがわかった。
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