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Vesica Pisces
第18章 太陽は静寂を誘う
デザートは小さなホールケーキで、溢れんばかりの苺がこれでもかと載っていた。

相変わらずの電話からの戻りの遅さ。

それでも今日はいつまで見ていても見飽きない夜景が広がっていた。

照明が少し落ちた気がする。

ガラス窓に青く反射する光にそちらを向いた。

『とーぅ…?』

さっきまでTシャツにパンツだったのに、こちらに向かってくる透はスーツを着ていた。

その手には…青いビジューに飾られたハイヒール。

透は目の前まで来ると、ハイヒールを置いた。

「履いて」

言われるがままに履くと、それは誂えたようにぴったりで、差し出された手を取ると立ち上がった。

ヒールの分だけ透に近づくと、透はふっと笑ってすぐ真剣な表情で、片膝をついた。

「サムシングブルーって知ってる?」

突然の事に答えられない。

「青いものを身につけた花嫁は幸せになれるんだって」

花嫁?何のこと?

「その靴を履いて、俺のところへ来て欲しい、

…結婚しよう」

透の手の中にはベルベットの箱に煌めく指輪が在った。

「伽耶?」

「…ぁ…っ…」

言葉にならない。

透がしてくれた全てに驚きと、それ以上の嬉しさをどう表していいのかわからなくて、ただただ涙が溢れた。
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