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Vesica Pisces
第21章 …1。
「あい、また可愛くなった?」

ひょいっと抱き上げた透。

「ちょっ…!子供扱いしないでよ!下ろしてってば!」

すとんっと下ろされると、くしゃくしゃっと頭を撫でて微笑みながら人混みに戻っていく。

「っ、透のばか!!」

涙も、憂鬱もどこかに吹き飛ばされてしまって、女2人、美味しいご飯に舌鼓をうちながら、透の海外遠征の様子や、学校生活について2ヶ月ぶりの話に花が咲いた。

「カヤ、アイ」

顔を上げたそこにはブリュノ。

軽くハグを交わしただけなのに、隙間から透が早く離れろと騒いでいた。

「賞をもらったんでしょう?写真みたよ、素敵だった」

「ありがとう、あれは本当に嬉しかった」

ブリュノのカメラに収められている写真を夢中で見る。

世界中の人と景色と文化とが溢れて、何気ない日常と、残酷な現実が交差していた。

「…っ‼︎…」

破壊された家の前で天を仰いで泣きじゃくる子供の写真に、胸がつぶされる。

「アイ…」

悲愴な表情を隠しきれなくて、でも次の写真へと送る事も出来ない。

「この子は無事保護されて、ちゃんと家族とも再会したんだ」

「良かった…良かった」

「アイは優しいね」

ブリュノはそう言って目を細めるけれど、これを見て心が揺らがないなんて。
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