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Vesica Pisces
第21章 …1。
先に送っていく写真の中でふと手を止める。

「この写真、ブリュノが?」

金色の地平線は夕焼けが朝焼けか。

さっき見上げたあの広告塔のに似ている。

「ああ、それは僕のじゃないんだ、えーっと…」

ブリュノは振り向いて人混みを探す。

「ヴィック!!」

手招きで呼ばれたのはこげ茶の髪に、深い藍色の瞳をしていた。

「ヴィクター・トレイシー、この写真を撮ったのは彼だよ」

「初めまして、水嶋あいです、この写真って駅前のに使われてませんか?」

「はい、よくわかったね」

「これは、朝焼け?夕焼け?」

「これはヴェシカパイシスだよ」

「ヴェシカパイシス?」

「そう、神様が世界を創造した時に、最初に創り出した光の生まれた瞬間の形だって言われてるんだ」

魚の形にも見えるそれはそんな大層なものだとは。

「本当はただの偶然」

気恥ずかしそうな笑うヴィック。

ブリュノはヴィックだけを残して何処かへ行ってしまう。

「ヴィックは…何歳?」

「19歳」

「…もう…見つけてるのね、好きな事」

「いいや、1番好きな事は失くしてしまった」

「え?」

ヴィクターは哀しい笑みを浮かべながら、両手を広げてみせた。

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