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Vesica Pisces
第2章 太陽は静寂を知る
「左脚庇ってるから、バランス崩してんじゃん」

図星を突かれて征治は頭を掻いた。

パークではメイン競技が終わり、フリーで各々が使用している。

「俺の見てよ、それなりに形になって来たよ、せんせ」

征治のバイクを借りてパークに出る。

夏頃から征治の動画を見たり、電話で教えてもらったりして少しずつ練習していたBMX。

征治とは違ってフリースタイルだけれど。

「透!!何やってんだよ」

VIP席の柵から身を乗り出すのは稜に万里。

「いつ帰って来たんだよ?」

「さっきだっつーの!」

三周目に入って透のエアがより高くなっていく。

「あいつ…四ヶ月そこらであそこ迄…」

失敗しても失敗しても、透の眼差しは強く高く前だけをしっかりと見つめている。

その熱のこもった眼差しはまた、征治の心にも火を灯して熱くさせる。

「…っ!透!!壊す前にとっとと返せっ!」

いつの間にか透のパフォーマンスに会場中が魅入っていた。

それは…彼女も例外ではなかった。

透はBMXを征治に返すと、集まってくる人とハグやハイタッチを交わしながらアレックス達の元へと戻ってきた。

「いつの間にあそこ迄もってったんだよ?」

「形になったのは先週」

テーブルに置いあった誰のものともわからない薄くなったアルコールのグラスを呷った。
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