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Vesica Pisces
第2章 太陽は静寂を知る
立ったままの透。

「いつ帰って来たんだよ」

何度めの聞き飽きた質問でも、それが嘉登からで、その横には彼女がいたから。

「…さっき、誰?」

嘉登は隣を見る。

「未知、幼馴染の妹」

そっち側じゃねーしと透はグラスを飲み干す。

「奥が和可菜ちゃんで、こっちは伽耶ちゃん、未知の友達」

「初めまして」

未知が代表して挨拶する。

やっと名前が分かったけれど、当の伽耶は体を和可菜の方にずらして死角を作ると、何やらごそごそしている。

「突っ立ってないで座れば?あと口、付いてる」

口元を拭うと赤い残り紅が付いた。

万里の隣に座るとますます伽耶は嘉登の陰になる。

「いつまでこっちに?」

「明々後日の午後まで」

身振り手振りだと思っていた、嘉登に肩を叩かれて向けられる笑顔も普通すぎて。

目が会う度に、その上げられていた両手が行き場を失って、笑顔と共にそっと仕舞われる。

「仕事、何してるですか?」

「プロライダー」

「ライダー?BMXの?」

「今はスノーボード」

未知の可も不可もない会話のやりとりは流石会社の総務だけある。

「みんな同じ会社?」

「そうです、同期で」

「スノーボードは何歳から?」

「7歳…か?」
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