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Vesica Pisces
第2章 太陽は静寂を知る
「透はね、自転車乗る前にスケボー乗ってたんだもんね!」

横からアレックスが会話に乗ってくる。

「で、雪でスケボー乗れないからスノボしてたんだもんね」

「雪で?」

「透のホームは北海道だよ」

「雪が溶けるとバイクだもんね」

「バイク?!」

未知の反応はアレックスを調子に乗らせるには十分で。

「透はFMXのライダーでもあるんだよ」

「FMXってどんなの?」

アレックスはスマホを取り出すとYouTubeを検索する。

「伽耶ちゃんは透のこと見た事あるよね」

「は?いつ?」

驚いたのは伽耶もだ。

瞳をまん丸に見開いたまま首を傾げる。

「ここに来る前に駅前の広告塔、あれコイツ」

「何だよ、広告かよ」

それでも伽耶は思い出した様に、驚愕の表情のまま透を見つめた。

小さな画面を覗き込む未知とアレックス。

興奮する声を上げる未知を嘉登が兄ヅラして制する。

万里が立ち上がって和可菜と伽耶をバーカウンターへ促す。

その表情は和やかで透の胸はざわつく。

「あの子、喋んないね」

嘉登と未知は顔を見合わせる。

「伽耶は…聴覚障がい者なの」

あの手の動きがやっと腑に落ちる。

けれど、だったら堂々と手話でもなんでもすればいいのに、何故途中で止めるんだ?
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