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Vesica Pisces
第3章 太陽は静寂を揺する
月曜の通勤ラッシュ。

乗り換えの通路から見えるあの広告塔は、今朝も変わらず太陽に照らされている。

朝礼を終えてメールチェックをし、入力や作成する資料の確認に追われる。

「松重、今日の昼、時間もらえる?」

担当の圭介に頼まれて伽耶は頷いた。

未知と和可菜にランチをパスするメールを送り、仕事を仕分けると急ぎのものから取り掛かった。

外回りからの戻りで拾われた伽耶はそのままオフィス街を少し離れた。

駅に差し掛かる交差点の人混みに一瞬視線を向ける。

と、人波にもう日本にいる筈のない透の姿が見えた気がした。

圭介と入ったお店はオシャレなカフェで、オープンテラスに通される。

話しは仕事の話が半分、気晴らしが半分。

“なんでこの寒い中、オープンテラスなんですか?”

「今日はそこまで寒くないだろ、それに満腹になってもこの寒さで頭も冴えるしな」

運ばれて来た今日のランチを食べながら、他愛もない話をする。

「来週から師走だからな、あんまり詰めすぎるなよ」

こうやってさり気なく気を遣ってくれる圭介は、伽耶が入社した頃から変わらない。

会社の一員として当たり前の様に仕事も振るし、ミスも指摘する。

戦力の一人として扱ってくれる圭介には本当に感謝していた。
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