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Vesica Pisces
第3章 太陽は静寂を揺する
今迄、嘉登らとの食事は週末が殆どだった。

木曜日、終業間際の和可菜からのメールは万里らとスポーツ観戦しないかとのお誘いだった。

未知は章吾と先約があった為、二人で指定された家へと向かう。

「さすがばんちゃん、売れてるねぇ」

和可菜は外観を見上げて、あっけらかん言ってのけた。

地下へと続く階段を、万里の後をついて下りていく。

「俺んちじゃないけどね」

万里がドアを開くと湧き上がる歓声に和可菜はびっくりした。

スクリーンの様な大型テレビではFMXが映し出されていて、缶ビールを片手に盛り上がっていた。

伽耶の瞳は画面に釘付けになる。

大きなランプの上からスピードを上げて下り、一気に跳び上がる。

舞い上がる土煙、一瞬時間が止まるトリック。

「伽耶、ここ透さんちなんだって」

“えっ?!”

「凄いよねぇ、地下一階はこーんなに広いリビングで、上が自宅なんだって!セレブは違うよねー」

「透–––っ!!」

Toru Mizushimaのテロップに画面の前で両手を上げて小躍りする面々。

ヘルメットの向こうの瞳はギラギラと輝いていた。

伽耶は両手を握って食い入る様に見つめていた。
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