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Vesica Pisces
第4章 太陽は静寂を開く
信号が青に変わって、BMXを押して歩き出す。

『ありがとう』

BMXを手渡して駅まで歩く間、伽耶の手は話したい事で溢れていた。

豊かな表情が手話を色付ける。

透の辿々しい手話が嬉しくて、伽耶の頬は緩みっぱなしだった。

駅まではあっという間で伽耶はあからさまに寂しがった。

「連絡先」

透にスマホを差し出されて伽耶も急いでスマホを出す。

『今度はいつまで日本にいるんですか?』

「年明けまで」

『じゃあクリスマスパーティーには来ますか?』

思わず身を乗り出して透に問い質す。

馴れ馴れしかったかな、それでもせっかく誤解も解けて仲良くなれたのだから一緒に過ごしたい。

「それやるの、俺んちだし」

ぶっきらぼうに答える透に伽耶は満面の笑みを返した。

「気をつけて帰れよ」

透に手を振って改札を潜る。

ホームへ向かう角を曲がる時にそっと振り向くと、そこにはまだ透の姿があった。

小さく手を振ると、透は鼻を擦ってから手を挙げた。

嫌われていたと思っていたから、煩わしいと思われていたから、その何気無い透の仕草に胸が温かくなる。

電車に乗り込むと、メールが来る。

“乗った?”

“乗った”

他愛のないメールが往復する。
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