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Vesica Pisces
第5章 太陽は静寂を焼く
「とーるさん!お風呂借りまーす」

リビングを抜けてゲスト用のバスルームへ向かう。

嘉登と目が合うと、伽耶はそっと手を合わせてお詫びした。

嘉登も酔っているのかうんうんと頷くだけだった。

透を探すとジェソンと一眼レフを覗いて大口を開けて笑っていた。

笑顔が溢れているだけで、自然とこちらまで笑顔になれる。

3人で代わる代わるお風呂に入り、出てくると聞いているのかいないのかわからないまでも、おやすみを言ってゲストルームに入った。

姿の見えなくなっていた透を探せるわけもなく、伽耶もまたベッドに潜り込んだ。

未知の寝返りで毛布を引っ張られて目が覚めた。

スマホを手繰ると時間は5時を回ったばかり。

そっとベッドを出てドアを開けると、一面に雑魚寝が広がっていた。

ソファーにもラグにも行き倒れた様に眠る人影。

足音に気をつけながら隅っこを歩きキッチンに立つと、後頭部辺りの窓を覗いて朝が訪れる前の暗闇が覆っている夜空を見上げた。

僅かに蛇口を捻って水をコップに注いでいく。

「っ!!」

背中に感じた重みと温もり。

微かに残るお酒の匂いに混じって、確かに香るその人の匂い。

振り返らなくても判る。

––––透だ。
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