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幼い獣たちは愛を知る
第1章 愛なんて知らない
『もちろんダメです』
『いいじゃないか、金を出すって言ってるんだから』
『俺にはあの子たちを大事にする義務があるんですよ。あなたはあの条件でいいとおっしゃった、だから連れてきた』

 控室として宛がわれた部屋で、俺とアストンは黙って肩を寄せて、マネージャーと客が話してるのを聞いていた。
 俺たちは鉄華団地球支部所属のアイドルだ。イメージアップと資金調達を兼ねて活動してる。例えばこうやって、金持ちとか政治家とかに貸し出されたりして。
 俺たちはもう、ヒューマンデブリじゃない。だから俺たちを呼ぶのに禁止事項もあるし、自宅でもホテルでも、俺たちのための控室を用意できないような人間には俺らは貸し出されない。

「デルマ、アストン、おいで」
 すぅっと扉が開いて、地球で雇われたマネージャーが手招きをした。俺らはいつものように、なんの感慨もなく手を取り合って控室を出る。
 マネージャーは、『周りが大事にしてやらないと価値のあるアイドルを演じることなんてできない』って言う。その言葉通り、この人にはほんとに大事にしてもらってると思う。
「最後に言わせていただきます。あなたが二人のうちどちらにご執心かはともかく、この二人を別々に扱うことは、例え社長が許しても俺が許しません」
 なんて、俺らを両腕に抱き寄せたりして。
 その言葉は嘘とか建前とかじゃない。もしなにかあったら、この人は本気で怒ってくれる。
 だけど、この人が許すかどうかは問題じゃないのも事実だ。
 社長はこのことを知らないし、俺らにすれば、規則は多くしておいた方がさらなる支援を引き出しやすいってだけのことだ。『あなた様がどうしてもとおっしゃるなら……』ってね。そーゆーときのこの人の表情を、俺らは知らないけど。



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