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煙〜男の破滅と解放
第3章 一週間
 目をさますとホテルの窓から差し込む日差しが自分を包み込んでいた。正人の精子の匂いとリサの匂いが混じって妖しい匂いが部屋を包み込んでいた。正人は子供が母親を探すように辺りを見渡した。リサの気配がない。慌てて起き上がると机の上にある一枚のメモ用紙が目に入った。
 そこには一言、『来週今日会った場所に来なさい。』とだけ書かれていた。正人はそのメモ用紙を大切にしまってホテルを出た。 
 
 正人はそれからの一週間仕事もろくに手につかなかった。正人の脳内にはリサの匂いが浸透し、正人が集中力することを妨げた。

「課長どうしたんですか?体調でも悪いんですか?」

 木曜日の昼下がり、部下の鈴木歩(すずきあゆみ)が明るい声で話しかけてきた。大学ではテニスをやっていたというが、健康的な脚はショートパンツからすらっと伸び、かくしてはいるが胸も相当大きいだろう。その上人懐っこい笑顔のせいか部署の男たちの中では圧倒的な人気を集めていた。また、新卒で今年から正人と同じ部署に配属された歩は優秀だった。あっという間に仕事を覚えて、入社して半年ちょっとの11月現在にはほとんどの仕事をミスなくこなす。正人は歩にとって良い上司だった。新しい仕事は時間を気にせず丁寧に教え、仕事の指示も的確でわかりやすかった。そんな正人のことを歩は尊敬し、兄のように慕っている。そんな正人の異変を歩はすぐに感じ取っていた。

「課長、よろしければ今日お仕事が終わりましたら、仕事のことで相談があるのでお食事御一緒していただけませんか?」

 歩は正人の心を探りたかった。(課長に何かあったんだろうか。。)


 
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