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篠突く - 禁断の果実 -
第10章 過去編四話 苦悩 (前編)
一連の騒動の後、二人は孝哉の部屋に戻っていた。
ベッドに座り、傷口を消毒するための準備をしている孝哉の傍らで、悠は肩を強張らせ、足を落ち着きなく動かしている。大方、これからされることに嫌悪感を抱いているのだろう。
消毒液を染み込ませた綿で悠の切れた唇を叩けば、案の定、彼女はびくりと体を震わせて小さく呻いた。
「い……っ」
「我慢」
傷口が染みるのは、あまり怪我をしたことのない悠にとっては慣れないものだ。チクチクとした、刺すような痛みとの戦いから逃れようとする彼女の体を、孝哉がぐっと押さえつけていた。
「ちゃんと消毒しないとバイ菌入っちゃうでしょ。もっと痛くなるよ、いいの?」
孝哉のそれは、まるで聞き分けのない小さな子供に言っているようだった。悠は萎れた花のようにしゅんと縮こまった。
きちんと消毒を終え、傷口を覆ったガーゼをテープで止めてやると、悠は安心したようにホッと息を吐いた。彼女が時折見せる、子供のような一面には毎度のことながら癒される。
ベッドに座り、傷口を消毒するための準備をしている孝哉の傍らで、悠は肩を強張らせ、足を落ち着きなく動かしている。大方、これからされることに嫌悪感を抱いているのだろう。
消毒液を染み込ませた綿で悠の切れた唇を叩けば、案の定、彼女はびくりと体を震わせて小さく呻いた。
「い……っ」
「我慢」
傷口が染みるのは、あまり怪我をしたことのない悠にとっては慣れないものだ。チクチクとした、刺すような痛みとの戦いから逃れようとする彼女の体を、孝哉がぐっと押さえつけていた。
「ちゃんと消毒しないとバイ菌入っちゃうでしょ。もっと痛くなるよ、いいの?」
孝哉のそれは、まるで聞き分けのない小さな子供に言っているようだった。悠は萎れた花のようにしゅんと縮こまった。
きちんと消毒を終え、傷口を覆ったガーゼをテープで止めてやると、悠は安心したようにホッと息を吐いた。彼女が時折見せる、子供のような一面には毎度のことながら癒される。