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篠突く - 禁断の果実 -
第12章 過去編五話 初めての
 まもなくして、ドン、と何かが壁にぶつかる音がした。部屋を出てすぐのところだろう。おそらく、弟はトイレに辿り着けなかった。
 二人の行いを責めるように雨は頭上を殴り続け、太陽のように光った雷が真昼のように部屋の隅から隅まで照らし出した。空を引き裂くような轟音に紛れて、喉から漏れた、締めるように小さな悲鳴と、悔しさの滲んだ声が悠の耳に届いた。
 ドン、ドンという地響きのような音が繰り返される。廊下から、ツンと鼻を突く、酸っぱい臭いが流れ込んでくる。
 悠は、両手で顔を覆った。そして、上体をずりずりと前へ倒した。腕を伝った熱い雫が、布団に包まれた膝を濡らす。
 ――やってしまった。やってしまった。
 弟は、孝哉は、何もかも自分のせいにしてしまう子だ。繊細で、脆い子だ。きっと、強く責任を感じているに違いない。実感がわいて、後悔しているに違いない。家族である姉と、愛を紡いでしまったことに。血の繋がった姉と、セックスをしてしまったことに。
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