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篠突く - 禁断の果実 -
第12章 過去編五話 初めての
孝哉の表情が、今の空みたいに翳った。どんよりとした、灰色だけが支配するこの空みたいに。
一度勢いのおさまった雨は、雹のように再び激しく屋根を叩いて、不規則なリズムを刻む。
「……孝哉……? どうしたの?」
その目に、その表情に、その全身に心配の色を浮かべた悠が、暗く沈んだ孝哉の顔を覗き込む。
――心配するべきなのは、俺のほうなのに。
その時、空が光った。孝哉の前に浮かび上がったのは、女の形をした、姉の顔。絶望に陥れるような轟きが、窓を震わせた。
――……姉さん。姉さんと、ヤった……。
「……ごめん、トイレ」
孝哉は耐えられず、鉄砲玉のように駆け出した。
部屋を飛び出した弟の背中を意地悪に隠した、木の扉。ずっと二人の行為を見ていたそれは、嘲るように笑っていた。
一度勢いのおさまった雨は、雹のように再び激しく屋根を叩いて、不規則なリズムを刻む。
「……孝哉……? どうしたの?」
その目に、その表情に、その全身に心配の色を浮かべた悠が、暗く沈んだ孝哉の顔を覗き込む。
――心配するべきなのは、俺のほうなのに。
その時、空が光った。孝哉の前に浮かび上がったのは、女の形をした、姉の顔。絶望に陥れるような轟きが、窓を震わせた。
――……姉さん。姉さんと、ヤった……。
「……ごめん、トイレ」
孝哉は耐えられず、鉄砲玉のように駆け出した。
部屋を飛び出した弟の背中を意地悪に隠した、木の扉。ずっと二人の行為を見ていたそれは、嘲るように笑っていた。