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美しい貴方の血がほしい
第1章 吸血姫の恋
甘い……ひと舐めした瞬間わかった。
ずっと探し求めていた味だ。
舌にからみつく、とろりとした感触に我を忘れる。咲きはじめのつぼみのように、かすかにひらいた薄桃色のそこにむしゃぶりついた。かぐわしい薫りがたちのぼり、呼吸を満たしていく。
「待って」
苦しげにあえぐ声が、これ以上ないほど密着したくちびるの間から漏れ、彼の腕が馬乗りになっていた私の肩を押し戻す。
「息ができない」
かすかに眉根をよせて私を見上げる目。いつものカラーコンタクトをはずしたその目は、ファンが見慣れた淡い青色ではなかった。
仄暗い蝋燭の灯りに照らされて、黒く濡れた瞳が揺れる。
「これぐらいで?」
私は両手をのばして彼の顔を柔らかくはさんだ。
「そんなに強く吸われたら苦しい」
言うほど嫌そうには聞こえない。
さらりと乾いた皮膚が心地よくて、そのまま首から上腕までそっと撫でてみる。彼は少しだけ身じろぎし、その口から甘い吐息が漏れた。
「気持ちいい?」
私の指先はゆっくり、彼の首と胸とを往復する。
「くすぐったい」
「それだけ?」
真上からじっと目を見つめると、彼は少し笑った。
「……わかるだろ?」
そう、わかっている。
彼の体は大きく反応していた。
「この時を待ってた」
歓喜を抑えきれず、声が震える。
「今夜だけでいい」
不意に下からのびた彼の手が、私が胸に巻いていたバスタオルを引く。はらりとほどけた純白の布はそのままはぎ取られ、私は生まれたままの姿になった。
本能的に胸を隠そうとした私の手首を、彼のしなやかな指が捕らえる。
「本当に?今夜だけでいいの?」
ささやくように言って、彼は身を起こした。
はだけたバスローブが肩から滑り落ち、ほどよく鍛えられた裸身を長い黒髪が蛇のように這い降りる。
思わず戦慄し、私は視覚だけでオーガズムに達しそうになった。
多くのファンに妖艶とうたわれる完璧なメイクがなくても、彼は十分に艶やかで妖しく麗しい。