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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第1章 しのちゃんの受難(一)

 好意を持たれること自体は、嬉しくてありがたいことなんだけど……私は教師で、彼は実習生。まだ、立場は対等ではない。

 ならば、一年後に彼が本当に採用されて教師になったら?

 対等の立場で口説いてきたら、そのときはどうするの?

 誘惑の多い四年で想いが変わらなかった子が、一年で心変わりをするとはどうしても思えない。
 それに、里見くんは、決めたことはきちんと実現させることのできる子だ。譲ることや妥協することを何よりも嫌う、頑固な子だ。

 里見くんは、一年後も口説いてくるだろう。簡単に予測がつく。

 軽々しく人の五年を縛ってしまった罪悪感からか、私に「向き合わない」という選択肢は浮かんでこない。
 彼が本気だと言うなら、本気で向き合わなきゃ。誠実さに欠けてしまう。



 ……篠宮小夜は、真面目な女だ。

 本当に、嫌になるくらい。
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