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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第17章 【回想】里見くんの始まりの日

 そうして、俺は小夜先生の答えも聞かず、彼女の体ごと国語準備室に押し入って、ドアを閉める。
 そして、驚きのあまり体を硬直させた小夜先生を抱きしめる。

 もう、駄目だった。
 何もかも、限界だった。

 あぁ、やっと、捕まえた――。

 無防備な小夜先生が悪い。触れられそうな距離にいた先生が悪い。
 俺のことを忘れてさえいれば、俺に捕まることなんてなかったのに。
 覚えてさえいなければ、俺が絶望しただけで終わったのに。

 何より、ピアスが違わなければ……高村からもらったものでなければ、俺はただの教育実習生でいられたのに。

 ぜんぶ、あなたのせいだ。

 俺の腕の中にすっぽりと収まった、折れそうな体。小動物のように震えているのは、俺が怖いのだろうか。

 暖かくて、柔らかくて、いい匂いで、やっぱりすぐに押し倒してしまいたくなるくらい、気持ちいい。

 好きだ。好きだ。愛している。
 触れたい。もっと触れ合いたい。
 やっぱり、抑えられない。こんな、深くて、浅ましくて、醜い気持ちを、隠し通せるわけがない。

 どうしようもなく、あなたが好きだ。
 どうしようもなく、あなたが欲しい。

 俺、頑張るから。
 今までだって、すごく頑張ってきたんだから。
 三週間なんて、六年に比べたら一瞬だから。
 あなたのためなら、何だってするから。

 だから。

 小夜先生。

 俺のことを好きになって。
 俺と一緒に生きる道を選んで。
 絶対に、絶対に、幸せにするから。

 お願い。

 俺も――幸せにしてよ。




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