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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第10章 しのちゃんの受難(六)
「誕生日おめでとう」
ぎゅうぎゅうと抱きついて離れない宗介の魔の手から何とか逃れながら、リビングに置いたままだった紙袋を渡す。
「ありがとうございます」
「ケーキはないよ。今からコンビニで買ってきてもいいけど、明日どこかで食べよ?」
「はい、それでいいので。開けても?」
「どうぞー」
ピアスが嬉しかったから、身につけていられるものがいいなと思った。
でも、宗介はアクセサリーに興味はなさそうだったし、ネクタイだとありきたりかな、と思った。時計は好みもあるし、ネクタイピンもつけていないし、何にしようか結構悩んでしまった。
「……ベルト?」
「そう、スーツのベルト! 抱き心地から宗介のウエストサイズを想像したから、長さは大体合っていると思う。でも、穴が開いてるんじゃなくて、自由な位置で留められるんだって」
「へぇ、面白い」
バックルが特殊な仕様になっていて、自由な場所で留められる。太っても痩せても大丈夫ですよと店員さんから言われた。本革製だから、長く使えると思う。
「ピアスには魔除けの意味があって、俺以外の虫がつかないようにと願ったけど、ベルトは何だろう?」
「……意味とかないよ。これから先スーツもよく着るし、長く身につけていてもらえるかなと思って」
「なるほど。俺の下半身を縛りつけておくためのものか」
勝手に解釈して納得している宗介を冷ややかな目で見つめながら、「そんなんじゃないし」と呟く。ほんと、絶対そんな意味じゃないのに!
「俺の下半身じゃないとすれば――」
するりと手首が取られ、輪っかがはめられる。輪っかがベルトであると気づいた瞬間に、その後の展開を想像して、絶望した。
「や、やだ、やめて!」
「縛られたいなら、そう言ってくれたらいいのに」
両手首がぎゅうと締まる。パチンと音がして、宗介がニヤリと笑う。
私がプレゼントしたベルトは、ベルトの役目を開始する前に、私の手首を縛り上げる道具として使われてしまった。
「ベルトを見るたびに、今夜のことを思い出すくらい――気持ち良くなろうね」
宗介は耳元でそう笑って、私をソファに押し倒した。