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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第13章 しのちゃんの受難(八)

「でも、徹さんは、私の胸には全く興味がないのよ。私から言われて初めて『あ、大きいかもしれないね』って言ったのよ、彼」

 いや、それもどうかと思うが。
 この巨乳がどれだけ見えていないのか。ビックリだ。

「だから、なのかもしれないわね。彼となら結婚してもいいと思ったのは」

 もう、本当に、智子先生には幸せになってもらいたい。話を聞くだけで悲しくなってくる。
 水谷さんは智子先生の繊細な心をちゃんと理解していたのだろうと思って、涙が出そうになる。

「水谷さんは、智子先生の内面が気に入ったんですねぇ」
「あ、あぁ……彼、黒髪フェチなの」
「……へ、え……え?」

 思わぬ性癖、フェティシズムである。
 黒髪……確かにあの日、智子先生は真っ黒な髪で、上手にゆるふわにセットしていた。確かに綺麗な黒髪ではある。
 私は少し染めているから、水谷さんのターゲットにはならなかったのだろう。

「でも、フェチも大変よ。お手伝いするたび髪がベトベトになるから、必ずシャワー浴びなきゃいけないし、シャンプーもコンディショナーもトリートメントも指定されたものを使わなきゃいけないの」
「……だから、ストレートなんですね」
「みたいよ。黒髪ストレートロングが至福だって言っていたわ」

 すみません、侮っていました。
 水谷さん、十分変態だった!
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