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LOVE JUICE
第4章 「待ってた」なんて言えないから
暗いから平気。
今日も一人、ここを訪れる。
何を期待しているわけでもない。なんて今になっては嘘になる。
寂れた映画館。上映されるのは封切りされて暫く経った"今更"なものばかり。それでも通うのはその雰囲気を求めて、だ。
それに気付いたのはほんの少し前のこと。
いつもの通り作品が終わりエンドロールが流れると、つんと鼻にその匂いがついたのだ。
(あれ……これって…………)
客は数えるほどしかおらず、その中でも女性客は圧倒的に少ない。
(もしかして…………そういうこと、だよね)
誰が、と顔色を伺うほどの勇気はなく、その日は静かに家へ帰ったのだった。夜道が少し怖かった。同時に危険で背徳的な興奮もおぼえた。
__あの日からその映画館へ通う動機が全く変わってしまった。
とはいえ以降特別なことは起こらず、その度に少しだけ私は肩を落とす。作品はもう台詞を諳んじて言えそうなくらい覚えてしまった。
だから今日で最後にする。
少しずつ服をはだけさせて、それでも駄目なら降参しよう。
なんて甘く考えていた。
甘いのはいつもと違う香水だけにしておけばよかったのに。