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サキュバスちゃんの純情《長編》
第12章 性欲か生欲か

 ただ、生きるだけだった。
 男から精液を搾り取って、飢えをしのいで、生きるだけ。
 生きることにも死ぬことにも、何の執着もなかった。
 時代が変わり、飢えて死ぬことはなくなっても、生きていることに何の意味も見出だせなかった。
 ――のに。

 今、目の前の海を眺めながら、私はただ一つのことを祈っている。

 先生。
 私、幸せになってもいいですか。
 幸せに、なりたいんです。

 生きていることを喜びたい。
 愛する人に……愛する人たちに出会えたことに感謝したい。

 先生が『生きてくれ』と言ってくれなければ、たどり着けなかった未来に、私はようやくたどり着けた気がする。
 先生以外では絶対に手に入れることができないと思っていた「幸せ」が、今、目の前にあって。
 私はそれを、受け入れたいと思う。

 先生。
 ミチは、あなたと過ごせて幸せでした。
 本当に本当に、幸せでした。

 あなたに捧げた愛を、捧げ続けた心を――今度はあかりとして、二人に捧げたいと思います。

 叡心。
 ありがとう。

 今まで、ありがとうございました。

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