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サキュバスちゃんの純情《長編》
第12章 性欲か生欲か

 海風がびゅうと吹きすさぶ。西の空は暗い。台風はどこまで近づいているのだろう。
 叡心先生の命を奪った嵐は、台風だった。しかも巨大でゆっくりと進むタイプ。この瀬戸内の近辺に甚大な被害をもたらしたと聞いている。

 あの日。
 目が覚めたら最愛の夫がいなかった。
 それくらいなら、なんてことはない。どこかにふらりと出かけることは多い人だったから。
 けれど、その前の晩、叡心先生はうわ言のように「愛している」「生きてくれ」と言いながら、私を抱いた。情事の際に言葉を発するのは少ない人だったから、言葉はよく覚えている。

 ――生きてくれ。
 その意味に気づいたとき。

 ――生きて幸せに。
 その重さに気づいたとき。

 先生は、夫はもう、私の手の届かないところにいた。

 叡心先生の遺言の「生きる」ことは守ってきた。
 飢えてどうしようもなくて、気がついたら酷い格好のまま道で倒れていたこともある。乱暴にされたことも、何人もの男を相手にしたこともある。衣服についた精液を舐めながら飢えをしのいだこともある。
 生きていたくない、と思ったことは数知れず。けれど、自ら死ぬことはできなかった。

『生きてくれ』

 それは、呪いの言葉のように私の体に染み込んで、離れてはくれなかった。

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