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臆病者のタイミング
第1章 臆病者のタイミング


「今日……来れる?」


「どないした?
なんかあった?」


「必要なの」


「わかった。
仕事終わったらすぐに行くから
待っててな」



…『すぐ行く』


そのいつもの
優しい周平の声に癒され
淋しくてたまらなかった
私の心が少し潤う

でも

それから周平が
私の部屋にやって来たのは

電話を切ってから
3 時間後のことだった




「遅い」

「詩織ちゃん、ごめんなぁ?
事故で電車止まっててな
バスもすっごい人並んでて・・」


本当かな・・・

本当は誰かと会ってから
ココに来たんじゃないの?

それとも・・・


来たくなかったんじゃ・・


言い訳しながら
玄関で靴を脱ぐ周平を
そんな疑いの目で見ながらも
周平が来てくれた事に
ホッとする

そして私は
『その瞬間』を待っていた


「こんな時間になってもうて・・」


まだ続いている
周平の言葉を聞きながら

『早く・・』
私がそう心の中で叫ぶと

靴を脱いで
私の目の前に立った周平は
ぴっったりと
私に寄り添い

そして
優しく耳元で囁いた


「かまへん?」


必ず周平は
そう聞いてから私を抱きしめる


「・・うん」


そうして欲しくて呼んだくせに
わざと戸惑うような返事をする

ズルい……私


すると周平は
ホッとしたように笑って
いつものように
私の腕に触れると

今度は
少し、悲しそうな顔で
私を見つめたあと

「ぎゅう・・」

って言いながら私を抱きしめた



癒されたい。

慰めて欲しい。

淋しい気持ちを
少しでも・・・忘れたい。


お互いの
そんな気持ちを埋める為に
始まったこの関係


周平と私は・・・


『ぎゅうフレ』なのだ
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