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蝶が舞う時
第1章 出会
悪夢でうなされていたのかもしれない。

目が覚めてベッドの棚にある時計に目を向けると9時半を過ぎていた。

何の悪夢か覚えていないが、昔の関わった様々な顔ぶれだけが浮かんでくる。

不快な感触を払拭する為に起き上がると、そのままキッチンへ向かいコーヒーメーカーのスイッチを入れた。

やがてコーヒーメーカーが発する心地よい香りが部屋中に漂い始めると、その不快な感触が徐々に薄れていく…

出来上がりのコーヒーを持ち、リビングのソファーに腰掛けて煙草に火をつけた。

少し甘めのコーヒーを飲み、煙草を吸いながらふと部屋を見渡す。

1LDKの1人用

3年前、離婚を契機に中古で購入した。

築年数の割に状態が良くて即決買いした物件。

同居していた俺の両親が二人とも他界したのは6年前。

その後話し合いの末、残された人生を別々に過ごすことを俺も家内も望んだ。

いわゆる熟年離婚。

親の遺産と実家の売却金額を家内と均等に分配して…

あれから3年

人との関わりを極力避け、再就職もせず、ひたすら当てもなく毎日を過ごしいる。

家内と分配したお金の残金で、贅沢しなければ6~7年は困ることはない。

但し、月に数回程 人との関わりを求める時がある。

そう、女と繋がるために…

女と繋がっている瞬間だけが孤独を忘れさせ、寂しさを紛らわしてくれる。

安らぎを感じる心地よい居場所へと俺を導いてくれる。

今朝の気分は正に俺をその衝動に駆り立てた。







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