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蝶が舞う時
第20章 究極の依頼
看護師が迎えに来て採血室に向かい、再び採血がされた。

次に超音波検査室に入ると、先程の医師が

「今からエコーですい臓の位置を確認しながら、穿刺針を入れて生検を行い細胞診断をします。


「針を刺す時は局所麻酔を行いますので、心配ありません。」

俺は医師の指示に従い、検査を受けた。


一連の検査が終わったら、時刻は午後3時に近かった。

待合室で再び待っていたら、

「東条さん、診察室にどうぞ」

俺は診察室に入った。

中では3人の医師がパソコンのモニターを見つめていた。

「お待たせしました。お疲れになったでしょう…」

「あっ、いえ。」

「一連の検査結果から、すい臓癌と思われます。」

「……」

「すい臓癌の進行度は、ステージⅠ~Ⅳa,Ⅳbとありますが、すい臓癌の場合は症状が出る頃には既にlll~Ⅳに移行してます。」

「東条さんの場合は既にⅣに達しており、残念ながら手術をしても転移を考えると厳しいと思われます。」

「と言うことは…」

「今後は抗がん剤や放射線治療で延命を図ることをお勧めします。」

「延命…」

「先生、単刀直入にお願いします。あとどれくらい…?」

「今後の治療の成果で変わりますが、すい臓癌の場合、このステージでは5年生存率は10%以下とされています。」

俺は目の前が暗くなった。

「やっちまった…」

「ご家族には…?」

「まだ20歳の家内とお腹の中に8か月の双子の女の子…」

「家内はここの医学部の一年生…」

医師達は頭を抱えた。

「でしたら尚更、治療を開始して一年でも長く生きるべきかと。」

「先生、今日は一旦帰ります。」

「分かりました。でも治療は直ぐにでも始めましょう。」

「ありがとうございました…」

俺は診察室を出て会計に向かった。

どうしたらいいんだ……

時計を見ると菜摘を迎えに行く時間だった。

俺は大学病院の駐車場を出ると大学の正門に車を回し、菜摘が出てくるのを待った。

しばらくすると、菜摘が大きなお腹を抱えてやって来た。

「ふう~おじさん、お待たせ。」

「ああ……お帰り。」

「お腹が重くて大変…おまけに教科書まであるから…」

「大丈夫か?」

「うん、来週いっぱいで休学になるから…」

「じゃ、帰ろう。」


菜摘には言えない……
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