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蝶が舞う時
第20章 究極の依頼
俺は一旦マンションに帰り、簡単な昼食を済ませてから痛み止めを飲む。

それから車で待ち合わせの喫茶店に向かった。


郊外へ向かう途中の川沿いに喫茶店がある。

独身時代に彼女とよくデートでここに来て将来を語り、結婚後もよく一緒に訪れた。

もう随分とここには来ていない。

店内に入り、昔よく座ったボックス席に腰掛けて店内を見渡す。

昔とあまり変わっていない…

ドアを開ける鈴の音がして、女性が入ってきた。

彼女は店内を見渡し、俺に気がつくとやって来た。

「お久しぶり。」

「ああ…久しぶりだね。」

ウェイトレスが水とメニューを持って来た。

「俺はコーヒーを、君は?」

「じゃ、久しぶりにポットチョコを…」

ウェイトレスがメニューを持って下がった。

「今、どうしているのかい?」

「午前中は近所のスーパーにパートに出てる。午後は老人保健施設で介護のアルバイトよ。」

「生活の方は、あなたに分けて頂いたお金で困らないけど、家にいてもする事無いから…」

「あなたはどうしてるの?」

「実は今年の春に再婚した。」

「へえ~よくその年で再婚出来たわね!」

「で相手はどんな人? 幾つ?」

「年齢は20歳、大学1年の医学生。」

「ええ? 20歳ってまるで自分の子供位なの? しかも大学生?」

「ああ…それに昨日子供が産まれた。双子の女の子だけど…」

「ええ? 双子の女の子? 何だか話のテンポが早すぎて理解出来ないわ…」

無理もない。

俺は菜摘との出会いからゆっくりと説明した。


俺はコーヒーを飲み干し、彼女もポットチョコを飲んでしまった。

「なるほどね…結果的に良かったじゃない。若い女性と再婚出来て、子供も授かったし…」

「私はあなたに申し訳なかった。子供を作れなくて…」

「そんなことはない…」

「あなたは決して口には出さなかったけど、あなたは子供が欲しかったはず…」

「良かったわ。あなたの望みが叶って…」

「実は良くないんだ…」

「どうしてなの?」

「俺には…癌があることがわかった…」

「えっ…癌…?」

「ああ…すい臓癌…しかも手術不能で5年生存率は10%以下らしい…」

「10%以下…」

「医師が早く抗がん剤と放射線治療を薦めたが、菜摘の出産後からと言ってある。」


彼女は固唾を飲んで聞いていた…




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