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蝶が舞う時
第22章 菜摘へ
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「菜摘…心配無い…おじさんはそう簡単にはくたばらない…」
「おじさん…菜摘を一人にしないで…」
菜摘の瞳から大粒の涙がこぼれ出す。
「明日、授乳が終わったら大学病院で治療の打ち合わせがあるから、菜摘も聞いて欲しい。」
菜摘はテーブルに伏して泣き続けた。
俺は菜摘の横に座り、菜摘を抱き寄せる。
「菜摘…大丈夫だ。大丈夫だから…」
菜摘は俺の胸元でしばらく泣き止まなかった。
結局その日、菜摘は止まってしまった。
俺の言葉には反応するも自ら動こうとはせず、俺はずっと菜摘に寄り添った。
やはり危惧した通りの結果だ。
厳しい…
次の日、菜摘が産科病院で授乳を始めた頃、スマホに着信が入った。
俺はフロアーの外のベランダで電話に出る。
電話は元家内の恵子からだ。
「もしもし…」
「もしもし…あなた?」
「ああ…俺だ…」
「菜摘さんに話をした?」
「ああ…昨日退院してから家で話をした…」
「そう、どんな様子?」
「正直、厳しい…危惧していた通りだ…ショックなのは判るが自ら動こうとしなくなった…」
「今はまだ、あなたがいるから良いけど…」
「そうなんだ…これじゃ死ねない…」
「そうよ、1日でも長く生きないと…」
「でもなぁ…必ず最後が来る…」
俺は目の前が涙で曇った。
「あなたの代わりは出来ないけど…意思を継ぐわ。」
「本当か…恵子…」
「あなたの口から恵子を聞くのは、何十年ぶりかしら…」
「但し、あなたの意思を継ぐには条件があるの…」
「条件…?」
「そう、私が動き出すのは、あなたが逝ってから…」
「…」
「だって、あなたがまだいる間に元妻が今の妻と対面なんておかしいから…」
「だから、お見舞いも遠慮する。本当は会いたいけど…」
「それと、菜摘さんが私を受け入れること…」
「菜摘さんが拒否するなら、私は無理…」
「判った。恵子…本当にありがとう…」
「今は離婚したけど…私の気持ちは菜摘さんと同じよ…」
「恵子…済まない。」
「また、何か有ったら連絡してね。それと治療を早く始めないと…」
「じゃ、これ以上話すと泣いてしまうから…」
「ああ…ありがとう…」
俺は電話を切った。
恵子と美咲が俺の意思を継いでくれる…
菜摘…お前はもう一人ではない…
「おじさん…菜摘を一人にしないで…」
菜摘の瞳から大粒の涙がこぼれ出す。
「明日、授乳が終わったら大学病院で治療の打ち合わせがあるから、菜摘も聞いて欲しい。」
菜摘はテーブルに伏して泣き続けた。
俺は菜摘の横に座り、菜摘を抱き寄せる。
「菜摘…大丈夫だ。大丈夫だから…」
菜摘は俺の胸元でしばらく泣き止まなかった。
結局その日、菜摘は止まってしまった。
俺の言葉には反応するも自ら動こうとはせず、俺はずっと菜摘に寄り添った。
やはり危惧した通りの結果だ。
厳しい…
次の日、菜摘が産科病院で授乳を始めた頃、スマホに着信が入った。
俺はフロアーの外のベランダで電話に出る。
電話は元家内の恵子からだ。
「もしもし…」
「もしもし…あなた?」
「ああ…俺だ…」
「菜摘さんに話をした?」
「ああ…昨日退院してから家で話をした…」
「そう、どんな様子?」
「正直、厳しい…危惧していた通りだ…ショックなのは判るが自ら動こうとしなくなった…」
「今はまだ、あなたがいるから良いけど…」
「そうなんだ…これじゃ死ねない…」
「そうよ、1日でも長く生きないと…」
「でもなぁ…必ず最後が来る…」
俺は目の前が涙で曇った。
「あなたの代わりは出来ないけど…意思を継ぐわ。」
「本当か…恵子…」
「あなたの口から恵子を聞くのは、何十年ぶりかしら…」
「但し、あなたの意思を継ぐには条件があるの…」
「条件…?」
「そう、私が動き出すのは、あなたが逝ってから…」
「…」
「だって、あなたがまだいる間に元妻が今の妻と対面なんておかしいから…」
「だから、お見舞いも遠慮する。本当は会いたいけど…」
「それと、菜摘さんが私を受け入れること…」
「菜摘さんが拒否するなら、私は無理…」
「判った。恵子…本当にありがとう…」
「今は離婚したけど…私の気持ちは菜摘さんと同じよ…」
「恵子…済まない。」
「また、何か有ったら連絡してね。それと治療を早く始めないと…」
「じゃ、これ以上話すと泣いてしまうから…」
「ああ…ありがとう…」
俺は電話を切った。
恵子と美咲が俺の意思を継いでくれる…
菜摘…お前はもう一人ではない…
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