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蝶が舞う時
第22章 菜摘へ
菜摘の退院の日がやってきた。

病院の最後の朝食を二人で食べ、帰る支度を始めた。

菜摘は帰る前に新生児ルームで桂菜と奈菜の授乳をする。

俺は1階の会計で支払いを終えると3階に戻り、新生児ルームを覗くと既に桂菜と奈菜は授乳を終えて保育器で眠っていた。

新生児ルームの奥のドアから菜摘が出てきた。

二人でガラス越しに桂菜と奈菜を見つめる。

「お乳の出る量が少ないですって…やはりミルクとの併用が必要ね。」

「そうか…おっばいは問題ないと思うんだが…」

俺は菜摘の胸元に視線を向けると

「なんか、菜摘のおっばいはおじさんのために有るみたい…」

「それはそれで嬉しいけど…今晩はマッサージをするから…」

菜摘は笑いだした。

「おじさんにマッサージをお願いすると、おじさんにもマッサージが必要なるわ。」

俺も笑いだした。

「とりあえず、明日から毎日授乳に来ないと。」

「桂菜ちゃんと奈菜ちゃん、明日も来るからね!」

俺は菜摘とマンションに戻った。


菜摘は荷物を片付けながら

「やっぱりお家が一番ね。落ち着くわ。」

一通り片付けが終わった後、俺は菜摘とテーブルでコーヒーを飲んだ。

「おじさん、今晩のメニューは何がいい?」

「今日は退院したばかりだから、寿司の出前でも頼もう。」

「あら、おじさん、大丈夫よ。作っても構わない。」

「それより…菜摘…大事な話がある…」

「なに? 大事な話って…」

「実は…大分前から背中に痛みが出る様になった。」

「ええ、おじさん大丈夫?」

「街のクリニックで検査したら、大学病院を紹介された。」

菜摘は不安げに聞いている。

「大学病院で再検査をして、病気が見つかった。」

「病気…?」

「ああ…病気は…癌だった…」

「えっ、がん?」

「そうだ、それもかなり進行したすい臓癌だそうだ…」

「すい臓…がん…」

「すい臓癌はなかなか難しい癌で、症状が出る頃にはかなり進行している。」

「お、おじさん…手術をするの?」

「いや、既に手遅れらしい。」

「手遅れ?」

「ああ…今後は抗がん剤と放射線治療をして癌の進行を食い止める。」

「治らない…の…?」

「残念だが…今後5年間生きられる可能性は10%も無い…」

「10%無い……」

「おじさん…嘘よね。冗談よね。」


歯車は動き始めた…





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