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君を好きにならない
第17章 見たことのない景色
その日以来
俺は
仕事が忙しくなり
帰宅時間も遅く
なかなか真琴と
ゆっくりできないまま
週末になった


「飲み過ぎてますよ、向井さん。
もうそろそろ帰りましょうよ」


身体は疲れてるが
やっと休める安堵感もあり
マンション近くの居酒屋で
真琴と珍しく酒を飲んでいる

酔いが回ってる訳ではないが
真琴と同じ時間を過ごせてるだけで
気分もいい

今日は真琴も酒を飲み
なかなかの上機嫌だ


「飲み過ぎてる訳じゃねーけど
そろそろ帰るか」


二人で店を出て
夜風に当たりながら
歩く

マンションまで
そう遠くない

それでも
その距離が長く感じるのは
俺だけだろうか

真琴に触れたいのに
触れられない
この時間が…いつももどかしいんだ

そう思っていたら

「距離感が…わかんねぇ」

真琴がそんなことを呟いた


「ん?」


「向井さんと
どのくらいの距離を開けて
歩いてたのか
わかんなくなっちゃいました(苦笑)
今くらいで大丈夫?」


俺の隣で
背中を丸める真琴は
八重歯を見せて
俺に笑いかけた


「あぁ、いいんじゃねーか?
俺も時々
わからなくなるけどな(笑)」


「ほんと?」


「あぁ。
意識しすぎると
距離開けすぎてたりするしな。
なかなか難しいもんだよ。

さ、着いたぞ」


俺達は
エレベーターに乗り込み
ドアが閉まると
どちらともなく
寄り添い

舌を舐めあっていた
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