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エリュシオンでささやいて
第10章 Changing Voice
 

 やけにひとの集まりが悪い。
 既に仕事が始まっている時間なのに、牧田チーフは仕方がないとしても、ライセンス課の雪村チーフも、女帝の腰元のひとりだった音響課の道下チーフもいない。今日は企画部のチーフ会議があるのに、あたしだけしかいない。
 それだけではなく、課長を始め他の社員達もぽつぽつしかいないんだ。

「ここ最近の報告は受けている。……単刀直入に言おう。実現していないプロジェクトの企画が盗られたぐらいでぐらぐらしているようであれば、エリュシオンは潰れるぞ」

 ……特別待遇を受けている須王は、社長の横に立っている。
 無表情でいる彼は、なにを思うのか。

「重大なのはこちらの情報が流出した件だ。会社の信用を裏切った者は、重大な厳罰を与える。場合によっては損害賠償及び刑事告訴も辞さない」

 場がざわめいた。
 社長がこんなに強気に出たのは初めてだ。

「誰が他者に情報を漏らしているのか、数人に頼んで試させて貰った。お前達が会社を裏切って情報を流出出来るかどうか。今村部長。企画部の報告を」

 部長は疲れ切った顔で言う。

「育成課は上原チーフのみ。イベント課は原口課長と牧田チーフ、ライセンス課は笹さんのみ、音響課は沼田課長のみ――以外からの辞意を確認しています」

「つまり企画部は合計何人だ」

「はい、私と早瀬くんを含めまして、七人となります」

 もしかして、茂と藤田くんと水岡さんは試されたのか。
 社長が牧田チーフを使って。

 確かにそれで牧田チーフが、須王に社長の名前を口にしたのは説明がつく。
 
 だけど――。
 だったら、牧田チーフはなんであんな姿になって、病院からいなくなったの?
 
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