この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第3章 Dear Voice
 

 別に驚かせるつもりはなかったけれど、いつも落ち着き払っている早瀬の慌てた声に、ちょっと胸がすっとした。

 深呼吸をして、一気に息と共に言葉を吐き出した。

「シンセの使い方、教えて……くれだぴょん!」

 ガ○スの仮面さながら、うさぎの仮面。
 あたしは、素直なうさぎになる――。

「さっきは大人げなくて、ごめんだぴょん!」

 ぺこりと重い頭を垂らした。

「……お前、上原……?」

「違うだぴょん! あたしはウサ子だぴょん、りすぴょん」

「り、りす?」

 あたしは僅かな視界から、りすの着ぐるみを指さした。

「りすぴょんは、あれを着るだぴょん!」

「……裕貴」

「な、なに?」

「なぜこのいらっとする状況になる前に、あいつを止めなかった」

「か、可愛いだろう、柚ぴょん。キュートでラブリーで……」

「あ゛!?」

「ひっ」

「りすぴょん、可愛いだぴょん。これでお揃いだぴょん」

「……お揃い……」

「だけどその前に、シンセの使い方教えるだぴょん!!」

 あたしはうさぎになりきって、ぴょこぴょこ跳ねた。
 

   ・
   ・
   ・
  
   ・

「あのさ、うさぎがぴょんならりすはなんて言うの?」

「知らねぇよ。あのシンセ弾いてるうさぎに聞けよ」

「あれはウサ子だけど、あんたはりすだろ?」

「違う!!」

「着てるし」

「胴体だけだ! 仕方ねぇだろ、じゃんけんで負けたんだから!」

「……柚がいつもチョキ出すの見抜いていて、パーだしたよね? そこまでお揃いでいたいの? なに、おねだりされたから?」

「……っ、ち、ちが……っ」

「違うの? 顔、真っ赤だけど」

「ち、違うで……りす」

「うわ、それ被って隠す? 顔を隠しちゃう?」

「うるさいでりす!! 俺はりすでりす」

「あんたまで……。その着ぐるみって、言い方も変わる効果でもあるのか? それともそういうお年頃?」

 ……なにか聞こえていたけれど、あたしは必死になって鍵盤を押す練習。

 本当に久しぶりの鍵盤に触れるのは、妙な高揚感があった。

 今まで諦観して拒否していたはずだったのに、なぜか得も言われぬ歓喜に満ちていることに気づき、胸が苦しくなった。

 早瀬と演奏した九年前を思い出して――。

 
/1002ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ