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禁断背徳の鎖外伝・73億分の奇跡
第8章 仮面と憩い
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「そう‥ですか…
人違い・・・」
「ああ・・
リストアップされたからといっても、決まるのには最低3日以上は掛かる、それに異存は?」
「いいえ、ありません」
少々無理やり話を切り替え、元の仕事の話へ…
その時、彼女が持つスマホの着信音が鳴った。
「・・はい‥
・・・・いえ、まだ打ち合わせ中ですが・・・」
「誰かね?」
「今、代理代表をしています長井顧問です」
確か、この買収話を推進した…
「・・・変わって貰えるか?」
「はい・・・」
彼女からスマホを借り、スピーカー音声に切り替えテーブルの上に置く。
『クラスター社からの、わざわざなお越し‥‥‥』
「無駄な挨拶は結構…
本題だが、こちらから人材を3名このホテルに回す…
それとリストアップされた物だが、持ち帰り検討した上でそちらに連絡する‥‥私の考えに異論は?」
『勿論ありません‥‥早乙女取締役の方針に従います』
「そうか…
明日には後任として、先行で3名が来るだろう…
後の事は後日直接連絡する」
『分かりました』
必要事項だけを話し、通話を切りスマホを彼女に返した…
彼女の方は驚いた顔で私を見ているが・・・
「・・本当に人違いでした、申し訳ありません‥‥‥早乙女取締役」
「世の中似た人間は居るものだ…
話は済んだ、私はこれで失礼する」
「ご苦労様です・・」
「・・・・・」
ファイルを持ち、椅子から立ち上がる…
彼女が深々と頭を下げる中、私は振り返る事無くラウンジから出た。
(・・多少すまないとは思うけどね…)
早乙女紀永と杉田季永は別人、その線引きだけは厳格にしなければならない。
私唯一の自由な時間を、早乙女の名で邪魔はされたくないという思いも…
プライベートくらい、好きにさせて欲しい。
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