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青い残り火
第8章 第8章
立ち並ぶ木々の緑はその色を増し、蝉の声は夏を高らかに歌いあげている。湿気をふくんだ風を肌に纏わせ、昨日と同じ顔をした生徒達が同じ方向に歩いてゆく。

「みんな平和」

芽衣は呟いた。

──寝坊した
こめん、先行ってて

待ち合わせ場所の駅前で一馬からのメールを受け取った芽衣は、「遅刻しないでね」と返信し、登校する生徒の群れの中へと入っていった。

最近の一馬は部活に顔を出したり、接客のバイトの筈なのに料理の仕込みで早出したりと、前にも増して忙しくしていた。
芽衣は二人の時間が減っていることに不安と不満はあったが、それを咎めて我儘だと思われるのは嫌だった。

テストの後、千紗は渋谷と映画に行き、ポップコーンひとつを分けて食べたと楽しそうに話してきた。
それだけかと馬鹿馬鹿しくなった芽衣は、「キスは?」と冗談混じりに訊いてみた。

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