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第8章 第８章

「まあね、夏休みに入ってからはずっとこんな感じ」

一馬は水の入ったグラスを手に取り、飲み干す勢いで喉に流し込んだ。
それを見ていた芽衣の目の端に女が映った。親しげな笑みを浮かべて近付いて来るその女性は、さっき視線を向けてきた客だった。

「一馬君久しぶり、元気そうね」

女が立ち止まった。香水の匂いが漂ってくる。
二人は無言で女の顔を見上げ、芽衣だけが視線を外して一馬を見つめた。
だれ？ と声にして聞きたかったが、もしも親戚だとしたら、その女性に失礼ではないかと思い、一馬の説明を待った。

「あ、あの……」

目を丸くした一馬の唇が震えている。

「ふふっ、一馬くん彼女できたんだ。私はあれからいろいろと、……あ、そうだ、理恵子の連絡先知らない？ 引っ越したみたいで連絡がつかないんだけど、何か聞いてる？」

「え、いえ、俺はなにも……」