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青い残り火
第4章 第4章
九時半を少し過ぎたところだった。雨のせいで時間を潰す客が多く、忙しさは一段落してきていた。
理恵子は明日があるからと真琴に告げ、五千円札をテーブルに置いて席を立った。

「あら、多いわよ」

「いいの、真琴ちゃんを一人にしちゃうお詫び」

「あはは、一人じゃないわ」

「そっか。一馬君、あとお願いします」

「はい」

店の扉を開けると、そぼ降る雨を蹴って走る車の音がした。

「まだ降ってますよ、傘は?」

「大丈夫、すぐそこでタクシー拾うから。……一馬くん」

「はい」

「真琴の家に行くのね」

その目に嫉妬の色は感じられない。

「……ええ」

理恵子は二度頷き、「ありがとう、お酒もお料理も美味しかったわ」と今日一番の笑顔を見せた。

「ありがとうございました。お気をつけて」

雨の中をゆく理恵子の後ろ姿が、西崎澪と重なった。国語辞典は乾いただろうかと、思う自分が可笑しかった。








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