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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第2章 ピガールの麗人
ジュリアンが運転する車に乗り、光が恋人と住んでいるというアパルトマンに着いたのは夜中近くであった。
パリ18区のバルベス、ラ・グット・ドール。
…多国籍の移民が多く移り住むスラムのようなカルチェだ。

古びて今にも崩れ落ちそうな煉瓦造りのアパルトマンを見て、縣は息を呑んだ。
…こんなところに、光さんは住んでいるのか…。
眉を顰めた縣を見上げ、光は殊更勝気な口調で笑った。
「マリーアントワネットが最後に住んでいた牢獄に比べたら、まるで宮殿だわ」
そして不意に真顔になり、頭を下げた。
「…今日は…ありがとう。お金は必ず返します。少し時間を下さい」
…勝気な侯爵令嬢が…
嫌いな男に、頭を下げるなんて…
屈辱以外何ものでもないだろうに…。
「いや、いい。あれは君にあげたものだ」
光が鋭い眼差しで縣を見据えた。
「だめよ。必ず返すわ。私はお情けをかけられるのが一番嫌いなの」
縣は手を挙げて光を制する。
「分かったよ。その話はまた今度にしよう。…早く家に入りなさい。…彼が待っているのだろう?」
その言葉を聞いた途端、光の眼が照れたように微笑んだ。
「では、お寝みなさい。縣さん、ジュリアン」
「お寝み、光さん」
「お寝み、ヒカル。またおいでね!」
光は小さく手を振ると、スカートをたくし上げながら足早に狭くて急な石段を駆け上がる。

足音を聞きつけたのか、アパルトマンの一室のドアが開き、中から夜目にも鮮やかなプラチナブロンドの彫像のように美しい青年…フロレアンが現れた。
フロレアンは光が階上まで駆け上がるとそのまま強く抱きしめた。
「ヒカル!どこに行っていたの?遅いから心配していたよ」
光はフロレアンの胸に顔を埋めると幸せそうに微笑んだ。
「ごめんなさい。バールで後片付けをしていて遅くなってしまったの」
愛おしげに光の頬を撫でる。
「良かった…ヒカルがどこかに行ってしまったのかと思った…」
光がフロレアンの首筋に両腕を絡ませる。
「…どこにも行かないわ…フロレアン」
「愛している。ヒカル…」
…仲睦まじい恋人達の長く甘いくちづけが始まった。

「…行こう…」
縣は2人から目を逸らし、ジュリアンを促す。
ジュリアンは密やかに車を走らせた。
「確かにいい男だ。…僕といいとこ勝負だけどね」
ジュリアンの軽口に笑う。
「…そうだな」
見上げた夜空には糸のように細い三日月が浮かんでいた。

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