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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第3章 16区の恋人
光は縣に面と向かいアカンベーをし、くるりと向きを変え、澄ました顔で机に向かい再び、ワインのリストの翻訳を始めた。
縣はやれやれと言うようにジュリアンに両手を広げて見せた。
…不思議な二人だなあ。
ジュリアンは首を傾げる。
…仕事の間は意思の疎通が取れていて、今やヒカルはアガタの右腕と言ってもいい頼もしい相棒なのに。
プライベートとなるとすぐにヒカルがアガタにつっかかったりする。アガタもそれを面白がって揶揄うから余計にヒカルが膨れるといった具合だ。
でも…少なくともアガタは楽しそうだ。
ここ最近でこんなにアガタの笑顔を見たことがないくらいに…。

その場の雰囲気を変えるつもりで、ジュリアンは陽気に口を開いた。
「そうだ!来週の土曜の夜にロッシュフォールのお祖母様のお誕生日会を本邸で開くんだ」
「それはおめでたいね。マダムロッシュフォールはおいくつになられるんだい?」
「80歳さ。相変わらず矍鑠とされていてお元気だ。…で、そのお誕生会にアガタとヒカルにも出席して欲しいんだよ」
縣は和かに笑う。
「喜んで出席させていただくよ」
光はあっさりと答えた。
「申し訳ないけれど、私は辞退させていただくわ。ドレスがないもの」
すかさず縣が答えた。
「私が用意しよう。ジュリアン、二人で喜んで出席させていただくとマダムロッシュフォールにお伝えしてくれ」
「ちょっと、勝手に…」
光がむっとしながら立ち上がる。
縣は大人の微笑みを光に向ける。
「これは仕事だ。光さん。秘書はボスのパーティには付き添うものだよ。…明日、ギャラリーラファイエットの外商を呼ぶ。好きなドレスと靴とバッグをオーダーしておいてくれ」
光が長い睫毛を揺らし、縣を横目で睨む。
「…また貴方からの借金が増えるわ」
縣は明るく笑いながら光に近づく。
「もちろんこれは会社の経費だ。君は何も心配しなくていい」
そして、光の顔をじっと見つめる。
「…私は華やかに装われた君を見るのが大好きだ。
遠慮しないでとびきり上等なドレスを選びたまえ」
光はそれを受け、蠱惑的に微笑む。
「ボスがそう仰るなら遠慮なく」
そしてぱっと太陽が差したように笑う。
「ジュリアン!私、パーティは大好きなの。華やかなパーティなんて久しぶり、楽しみだわ!」
「ヒカル!僕もだよ!パーティでは僕と一番に踊ってね!」
…はしゃぐ二人を縣は楽しげに眺めた。




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