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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第3章 16区の恋人
客間では、和やかに午後のティータイムが始まった。
光とフロレアンは広いテーブルの隣り同士に座り、人目も憚らず熱く見つめ合った。
殊にフロレアンは光の姿をまじまじと見つめ
「…ヒカルのこんなドレス姿を見るのは久しぶりだ。…やはりヒカルは高価な服が良く似合う…。
僕といた時には、こんな服は着させてあげられなかった…」
少し寂しげに呟いた。
「私が無理やり押し付けたのですよ。光さんには秘書として公の席に同行してもらうこともあるかもしれないので…まあ制服みたいなものです」
縣がさりげなく説明する。
「アガタ、気を遣ってくれてありがとう。ヒカルは幸せだ。こんなに理解のある友人に恵まれて…」
「光さんはよくやってくれています。お陰で仕事が捗って新規のワイナリーも開拓できそうです」
フロレアンは愛おし気に光を見る。
「良かったね、ヒカル。…ねえ、ヒカル、これからサンリスの町に泊まりにいかないか?友人がペンションをやっているんだよ。実は先日、マレー子爵が僕の絵を高く買い取ってくれてね。臨時収入が入ったんだ。
…君には少しも贅沢をさせてあげられなかったから…。
サンリスにあるノートルダム聖堂は素晴らしいんだ。ぜひ、君に見せたくて…」
フロレアンは光の白く美しい手を取り、指先にキスをする。
「…嬉しいわ、フロレアン。…でも、今日と明日はまだ仕事が…」
珍しく遠慮勝ちに言う光に被せるように
「それは丁度良かった。まだ言っていなかったが、私とジュリアンも明日からフォンテーヌブローに遠乗りに行く計画があってね」
縣がジュリアンに目配せをした。
「へ?…あ、ああ!そうそう!僕の馬場がフォンテーヌブローにあるから縣を誘っていたんだ」
ジュリアンが慌てて話を合わせる。
「…と言う訳で光さんの仕事はないので、フロレアンとのんびり休日を過ごし給え」
察した光は縣をじっと見つめ、感謝を込めた笑顔を送った。
「…ありがとう、縣さん。貴方は本当に優しいボスだわ」
それは光の心から言葉だった。
縣は微笑みながら小さく頷く。

二人の美しい恋人はそれからお互いを蕩けるように見つめ合い、楽し気に休日の計画を語り合う。
ジュリアンがそっと縣に耳打ちする。
「…本当に君は人が好いな…僕はちょっとばかり妬けるけどな」
「…急に遠乗りがしたくなっただけさ」
縣は澄まし顔で答え、熱いアッサムティーを口に運んだ。

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